新型コロナ、最悪のシナリオ
未知の驚異に対しては予防原則という考え方があります。その影響が重大で取り返しのつかない可能性があれば、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも規制をすべきだというもので、世界的にも、気候変動、あるいは放射線防護などでも使われている考え方です。
とは言え、闇雲に規制するというわけでもなく、分かっている範囲から推定し、ゼロリスク(リスクフリー)ではなく、許容範囲も設定された上での規制です。
例えば、低線量の長期被曝に対しても、確定できるだけの十分なデータはありませんが、公衆の追加被ばく限度を年間1mSvとしているのも、決してリスクフリーではなく、これまでの不幸な事故から得られたデータをもとに、日本における交通事故程度=年間数千人の重大な健康被害を許容するリスクとして推定されている値です。
人間の場合、最も高いハードルは、積極的な人体実験ができない、ということです。治療薬やワクチンの場合も、治験という実験が行われますが、試験管の中の実験から、動物実験を重ね、最後に人間を対象として治験を行うものの、それでも、承認後に分かることも多く、発売から何十年も経って追加される重大な副作用は増える一方です。
逆に、警戒したほどではなかった、という例もあり、代表的なものでは、ダイオキシンは史上最大の毒性を持つと言われていましたが、それは動物実験の結果であり、かなり厳しい規制が行われたものの、何億人分もの致死量でも毒殺されなかった人がいたり、事故による流出でも被害が出なかったり、そういうことの積み重ねで、想定されていたような強い毒性はないことがわかりました。
ただ、どちらに振れても、これを決めるのが役人という強い慣性を持った人達なので、色々なことが分かっても、方向転換は容易ではありません。
また、「ポリオの原因とアイスクリーム」でも書いたように、相関関係と因果関係は同じではありませんし、社会を守ることと、個人を守ることが必ずしも同義ではなく、インフルエンザワクチンも個人より社会を守る=集団免疫をつけることであり、今の新型コロナ禍で欧米でもマスクを認めるようになったのは、一個人より社会=多くの個人を守ることが目的になっています。
さて、パンデミックにまでなった新型コロナウイルス感染症ですが、謎の新型肺炎から、新型コロナウイルス感染症だということがわかり、ゲノム解析も進み名前も付き、感染状況なども分かってきましたが、まだまだ分からないことも多くあります。
ウイルスの拡散や、量、例えば従来との違いでいえば、症状や重症度より発症時期との関連や年齢に比例してウイルスの拡散が多い=高齢者ほどうつし易いとか、モノの表面や空中にどのくらい存在しているかは分かっても、どのくらいの量で感染するのか、数千なのか、数千万なのかは分かっていません。
感染経路も、飛沫と接触とされていますが、院内感染がこれだけ多く、従来とは全く違う感染経路も疑われています。そこで、マイクロ飛沫、エアロゾル感染などが疑われていますが、確定できるだけのデータはなく、ニューヨークの病院などでは、むしろ、徹底した手洗い=他人が触ったものは全て感染源という認識、で感染防護の成果を上げています。
感染すれば抗体ができるので、国によっては、抗体検査も実施していますが、その抗体で免疫が獲得できるのか、免疫があっても、いつまで続くのか、数ヶ月なのか、数年なのか、生涯なのか、それも分かりません。つまり、集団免疫を獲得できるのか、ワクチンができるのかも分かりません。仮に50%の人に効いて、30%の人には効かず、残り20%の人はむしろ悪化してしまうようなワクチンができた場合、事態はもっと悪化しますが、その可能性は決して低くありません。
また、色々な抗ウイルス薬や消炎剤が効いたという報告もありますが、それはサプリメント広告の「個人の体験」に過ぎず、最有力と思われ安倍首相も一押しのアビガンはランダム化比較試験ではアビガンを使わないグループとの有意差は出ておらず、アクテムラはプレプリント(査読前論文)すらなく、最も早く承認されるといわれているレムデシビルもランダム化比較試験の成績は良くありません。
更に、これだけ感染が拡がって、大量の薬を使うことで変異が促進されることまで考えると、最悪のシナリオはどこまでも最悪なものになりそうです。それにしても、最大の懸念材料は政府と、相変わらず密な会見を開く新型コロナウイルス感染症対策専門家会議かも知れません。
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