「数学書として憲法を読む」
友人から、前広島市長の秋葉氏の書かれた「数学書として憲法を読む」という不思議な本をいただいた。
著者がアメリカ・タフツ大学の教授をしていた頃、同僚に
「天皇にはそもそも日本国民としての人権が保障されているのか?」と聞かれたことが、
改めて憲法と天皇について考え、そしてこの本を書く動機になったようだ。
私も、天皇家の人たちに苗字がないというのも不思議ななことだなとは思っていたが、
でもそうしたことを憲法との関係で考えてみたことはなかった。
平成天皇が退位され、令和の時代になったが、その際にも憲法について議論されたし、
最近は自衛隊との絡みで憲法改正が議論されているが、
実は、いままで憲法の全文を読んだことがなかった。
親しい友人の1人は「建築という3次元のことを2次元の言葉にし、法律にするなんて不可能なことだ」といっていたが、
現実に建物を作る際には法律を無視するわけにもいかず、ブツブツいいながらも勉強していた。
そうした全て法律のベースにあるのが憲法というわけだ。
別の友人は
「契約書は破るためにあるのだ。破れないような契約書は、そもそも結ぶ必要がないのだ」
といっていた。
それ故にだろう、破ったときの罰則規定が契約書にはたくさんついている。
日本には「和をもって尊しとなす」という言葉があるが、
聖徳太子が8世紀に制定されたという17条憲法の第1条冒頭にあるお言葉だという。
素直に読めば「仲良くするのは尊いことだ」という意味だと思うが、色々に理解されているようでもある。
著者は数学者らしく、ユークリッド幾何学を解くかのように憲法を、素直に論理的に読んでいったらどうなるかについて、語ろうとしている。
気になった部分を抜粋すれば、
「憲法は死刑を禁止している」というのだ。
憲法中には「死刑を禁止する」との明文規程はないが、他の条文から推論していいけば、そした結論なるのだと いくつもの条文を引いて説明している。
憲法99条では「・・・この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と書かれているが、それは文字通り義務と読むべきであって、道徳的要請ではない、ともいっている。
そして「本書はあくまでも数学書として読む立場ですから、私たちの心情はさておき、常識的にはあり得ないことでも・・・」
とことわって論を進めている。
憲法第1条では、天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基ずく。
と書かれている天皇についての部分、
そして憲法9条の変更がいかに不条理であるか等の論理展開は
かなり厄介だが、読み進めば、クイズを解くような面白さもある。
憲法論とは別枠の付論の部分は面白いこと、請け合いだ。
東大法学部卒の「頭のいい奴=嘘で塗り固めた言い訳の上手い奴」
ということになるのだろうか、
こうした図式になるところも面白い。
さらに著者は「現行憲法は都市型の憲法です。国家と都市の最大の違いは、軍隊を持つか否かであるとも言われています。
9条を掲げる日本国憲法は、世界が国家の時代から都市の時代に進化した際に、モデルとしての役割を果たせるものです」
ともいっている。
さりげなく書かれているが、重い言葉だ。
103条しかない憲法は極めて常識なことを改めて言葉にしているようにみえるが、
それを数学の問題を解くように、読み解いていくと、
そこに大変深い意味があることを著者は教えてくれる。
「数学書として憲法を読む」という本を脇に置いて、
改めて憲法を読むことをお勧めする。
元安川
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