クモ膜下出血と心臓マッサージ
今日は、コメントでリクエストのあった森友問題についての記事を書いていましたが、急遽、原稿を差し替えることにしました。
それは、京都府舞鶴市で行われた大相撲春巡業で、土俵上で挨拶をしていた市長が突然倒れ、女性が「女人禁制の」土俵に上がり、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を施し、市長の命を救った、という件に関し、広島市内の医師で議員でもある方が「あの場での救命処置が必要であったのか疑問に思う」と書かれ、それを鵜呑みにするコメントが続いていたからです。
私は実名で異論のコメントを書きましたが、医師がそう言えば、そう思う人も少なくないようなので、敢えてブログにも書くことにしました。
その医師は「クモ膜下出血と同時に心肺停止になることはありません。」「むしろ安静にすべきです。心臓マッサージによって出血部位の安静が保てなくなった可能性も否定できません」と書かれていますが、クモ膜下出血による意識消失の場合、不整脈の場合も多く、その不整脈は心室性頻拍という致命的なものになります。
何より、あの現場で「クモ膜下出血」という判断は不可能であり、看護師が呼吸も確認せずに胸骨圧迫をすることはありませんし、仮に呼吸をしていても死戦期呼吸(心停止の直後に起きる呼吸)ということもあるので、迷うようなら、胸骨圧迫かAEDが救急救命の基本です。
もちろん、心臓マッサージにもリスクはありますが、必要のない人に心肺蘇生を施すリスクと、必要な人に心肺蘇生を施さないリスクでは後者の方が圧倒的に高いリスクとなります。心肺停止は数分で死に至るような事態ですから猶予はありません。
しかも、報道されている女性看護師は、隣の人に時間確認の指示を出していることから考えても相当に訓練され、冷静に対応していることが分かります。
そして、AEDが到着し、後から上がってきた女性に変わり、更に、救急隊員に変わっていますが、そうしたタイミングも完璧に思えます。
とは言え、私は医師ではありませんし、医療関係者でも学者でもありませんので、もし専門家の方で、更に詳しいコメントが頂ければ幸いです。
ちなみに私の場合、既に人生には満足しているので、そっとして楽に逝かせてください。
いつも仏説阿弥陀経で聞かされている素晴らしい浄土に早く行きたいのです。
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救急救命士です。
この記事に書かれていることは、専門家としか思えないほど正確ですが、少し補足しておきます。
私もネットで医師が「脈もとらずに胸骨圧迫をしていた」と、女性看護師の行動を非難するような書き込みを見ました。しかし現場ではあのように急に意識を失ったような場合では触診での脈拍の確認は無理なことも多く、現在の心肺蘇生ガイドラインでも省かれています。
工場長さんの書かれている通り、通常ではない呼吸であれば胸骨圧迫やAEDというのが救命活動の基本です。広島の方ならズムスタで倒れた木村拓也監督がクモ膜下出血だったことも記憶されていると思います。不幸な結果でしたが、今回は倒れた市長さんも回復されているようですし、あの女性の対応が良かったことを疑う余地はありません。
それにしても工場長さんの年齢はぞんじあげませんが、これほどの記事の書ける方にはまだまだ長生きして欲しいものです。(^-^)
投稿: 救急救命士 | 2018年4月 7日 (土) 09時25分
ネットの記事からですが、この市長さんは元医師で、救命をされた女性は医師だった頃から知っていたベテランの看護師さんだそうです。
だから的確な判断と行動をされたと思います。
くも膜下は、その後にわかった事でしょうから、その時の判断を批判をするのは後出しジャンケンのようなものですね。
日赤の救急救命の講習を受けた時に、素人は脈を見るのは難しいから、意識がなく呼吸がなければ、最優先するのは胸部圧迫だと教わりました。人工呼吸はその次だと。ただし、大量に出血していたら止血が先だと。
まあ、経験ない素人には、簡単にはできないですよね。
投稿: やんじ | 2018年4月 7日 (土) 20時04分
救急救命士さん
まさに最も専門とされている方からコメントを頂き感謝いたします。
診察室に来る患者を診察し一々エビデンスを要求される医師と、救急現場で命を最優先に時間と戦う救急救命活動では観点も違うのだと思いますが、それでも「脈もとらずに」と非難する医師と「女性は土俵から降りて下さい」とアナウンスする行司は同じように思えます。
投稿: 工場長 | 2018年4月 7日 (土) 21時46分
やんじさん
先のコメントにもあるように、専門家でも、急に気を失った人の脈を頸動や大腿動脈の触診で確認することは難しく、聴診器を当てるかモニターを装着しないとなかなか分からないものです。
人工呼吸についても様々なケースがあり「倒れた瞬間を目撃している成人の(心原性)心停止」については胸骨圧迫が一番ですし、人工呼吸は心理的な抵抗も大きいので講習でも胸骨圧迫しか教えないことも多いようですが、子どもや溺水などの「呼吸原性心停止」では人工呼吸も必要なのでプールや海に関係する場合は、ちゃんと人工呼吸もマスターしておく必要があります。
しかし、スポーツだけでなく、公的なイベントやボランティアに関わっていれば、救急救命処置の講習も一度といわず何度か受けているはずですが、いざとなると、あの土俵上の男性諸氏のように、何もできないものなのでしょうね。
投稿: 工場長 | 2018年4月 7日 (土) 21時50分
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救急救命士です。
この記事に書かれていることは、専門家としか思えないほど正確ですが、少し補足しておきます。
私もネットで医師が「脈もとらずに胸骨圧迫をしていた」と、女性看護師の行動を非難するような書き込みを見ました。しかし現場ではあのように急に意識を失ったような場合では触診での脈拍の確認は無理なことも多く、現在の心肺蘇生ガイドラインでも省かれています。
工場長さんの書かれている通り、通常ではない呼吸であれば胸骨圧迫やAEDというのが救命活動の基本です。広島の方ならズムスタで倒れた木村拓也監督がクモ膜下出血だったことも記憶されていると思います。不幸な結果でしたが、今回は倒れた市長さんも回復されているようですし、あの女性の対応が良かったことを疑う余地はありません。
それにしても工場長さんの年齢はぞんじあげませんが、これほどの記事の書ける方にはまだまだ長生きして欲しいものです。(^-^)
投稿: 救急救命士 | 2018年4月 7日 (土) 09時25分
ネットの記事からですが、この市長さんは元医師で、救命をされた女性は医師だった頃から知っていたベテランの看護師さんだそうです。
だから的確な判断と行動をされたと思います。
くも膜下は、その後にわかった事でしょうから、その時の判断を批判をするのは後出しジャンケンのようなものですね。
日赤の救急救命の講習を受けた時に、素人は脈を見るのは難しいから、意識がなく呼吸がなければ、最優先するのは胸部圧迫だと教わりました。人工呼吸はその次だと。ただし、大量に出血していたら止血が先だと。
まあ、経験ない素人には、簡単にはできないですよね。
投稿: やんじ | 2018年4月 7日 (土) 20時04分
救急救命士さん
まさに最も専門とされている方からコメントを頂き感謝いたします。
診察室に来る患者を診察し一々エビデンスを要求される医師と、救急現場で命を最優先に時間と戦う救急救命活動では観点も違うのだと思いますが、それでも「脈もとらずに」と非難する医師と「女性は土俵から降りて下さい」とアナウンスする行司は同じように思えます。
投稿: 工場長 | 2018年4月 7日 (土) 21時46分
やんじさん
先のコメントにもあるように、専門家でも、急に気を失った人の脈を頸動や大腿動脈の触診で確認することは難しく、聴診器を当てるかモニターを装着しないとなかなか分からないものです。
人工呼吸についても様々なケースがあり「倒れた瞬間を目撃している成人の(心原性)心停止」については胸骨圧迫が一番ですし、人工呼吸は心理的な抵抗も大きいので講習でも胸骨圧迫しか教えないことも多いようですが、子どもや溺水などの「呼吸原性心停止」では人工呼吸も必要なのでプールや海に関係する場合は、ちゃんと人工呼吸もマスターしておく必要があります。
しかし、スポーツだけでなく、公的なイベントやボランティアに関わっていれば、救急救命処置の講習も一度といわず何度か受けているはずですが、いざとなると、あの土俵上の男性諸氏のように、何もできないものなのでしょうね。
投稿: 工場長 | 2018年4月 7日 (土) 21時50分