報道されない集団訴訟
広島高等裁判所が伊方原発3号機の運転を差し止める決定をしたことは、さすがに大きく報じられていますが、あまり報じられていない原発関連のニュースに、アメリカでの集団訴訟があります。
それは福島原発の事故の被害者が原発の設計者であるGE(ゼネラル・ エレクトリック社)を訴えたもので、訴訟はマサチューセッツ州ボストンの連邦地方裁判所に提訴されています。
http://www.bostonmagazine.com/news/2017/11/17/general-electric-fukushima-lawsuit/
ボストンの地元紙は「問題のある絶望的な原子炉を設計したGEに対する560億円規模の集団訴訟」と報じていますが、原告は今のところ3人の住人と6つの法人で、訴状にある被害総額は28兆円であり、被害者は15万人ですから、兆円単位になる可能性も十分にあると言われています。
日本とアメリカの集団訴訟の大きな違いは、アメリカでの集団訴訟は被害者の一部が被害者全員の代表として訴訟を起こすので、他の被害者も「訴訟に参加しない」ことを示さなければ自動的に原告になるという点です。かつて、たばこメーカーを訴えた集団訴訟では、42兆円という国家予算並みの和解金も出ています。
この裁判は、「GEはメルトダウンを起こした原子炉の設計製造や保守に関わってきたのに、福島原発事故による経済的損失などに対して何の責任も取っていない」というものですが、GEの製造者責任を問う文脈もあるようです。
アメリカのPL法(製造物責任法)は、日本より企業にとって厳しいものになっており、日本では企業の過失を被害者が立証する必要がありますが、アメリカでは逆に企業は無過失を立証する必要があります。つまり被害が出た段階で製造者には責任があるということが前提となります。
また、興味深いのは担当弁護士は原発を作るためにアメリカから一家で日本にきていた技術者の娘さんだということです。この辺りはアメリカの「正義感」を感じ、日本や韓国ではありえないことのようにも思えます。
さらに、サンディエゴでは、空母ドナルドレーガンの乗組員数百人が起こしている集団訴訟もあり、これはGEだけでなく東電も被告になっていますが、福島沖で被曝し、死亡者も出ているようです。
加害者が政府に守られている日本とは違いアメリカでは企業に厳しい判決がでることが多いので、被害者には有利です。
ただ、原発に関してはCSC(原子力損害の補完的な補償に関する条約)との絡みもあり、高いハードルになるかも知れません。
いずれにしても、日本政府の政策によって被害を受けた人たちが、アメリカで救済されなければならない、というのは残念なことですが、結果を見守りたいと思います。
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日本国政府は、
海外で建設する「原発が事故を起こした場合はその被害を補償する」として契約したとの記事を読んだ記憶があります。
事故が起こったら、それこそ日本が経済破綻するかもしれませんね。
投稿: 補償 | 2017年12月16日 (土) 08時22分
原発から出る放射線を無害にするには10万年の長い年月が必要と言われている。
今回の広島高裁の判断は決して突拍子的な事ではない。電力会社はもっと慎重な
対応を検討すべきと警鐘を鳴らしたといえる。我が国を取り巻く東アジアは安定的
とは言えないし、日本人の中にも薬物中毒や精神に異常をきたした者も増加傾向に
あり、原発施設がターゲットになる可能性は充分にある。新規着工は禁止、既存の
原発は期限を切って出来るだけ早期に廃止にすべきです。
投稿: 鯉の応援団 | 2017年12月16日 (土) 10時28分
補償さん
唯一の戦争被爆国であり、原発で過酷事故を経験した日本という国が、原発を再稼働させることも、輸出することも、全く理解できないことです。
原子力安全委員会委員長の斑目氏は「結局はお金で解決するしかない」と言いましたが、お金で解決できる問題ではないと思います。
投稿: 工場長 | 2017年12月18日 (月) 19時05分
鯉の応援団さん
どんな工場であれ、廃棄物の処理も決まらない状況で操業が許されることはありません。それが、どうして原発だけが特別なのか、電力の需給の問題でもなければ、発電コストの問題でもないことは明らかですから、建前ではなく、本音で議論すべきことですが、こうした誤魔化しが全てのことについて多いように感じます。
投稿: 工場長 | 2017年12月18日 (月) 19時07分
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日本国政府は、
海外で建設する「原発が事故を起こした場合はその被害を補償する」として契約したとの記事を読んだ記憶があります。
事故が起こったら、それこそ日本が経済破綻するかもしれませんね。
投稿: 補償 | 2017年12月16日 (土) 08時22分
原発から出る放射線を無害にするには10万年の長い年月が必要と言われている。
今回の広島高裁の判断は決して突拍子的な事ではない。電力会社はもっと慎重な
対応を検討すべきと警鐘を鳴らしたといえる。我が国を取り巻く東アジアは安定的
とは言えないし、日本人の中にも薬物中毒や精神に異常をきたした者も増加傾向に
あり、原発施設がターゲットになる可能性は充分にある。新規着工は禁止、既存の
原発は期限を切って出来るだけ早期に廃止にすべきです。
投稿: 鯉の応援団 | 2017年12月16日 (土) 10時28分
補償さん
唯一の戦争被爆国であり、原発で過酷事故を経験した日本という国が、原発を再稼働させることも、輸出することも、全く理解できないことです。
原子力安全委員会委員長の斑目氏は「結局はお金で解決するしかない」と言いましたが、お金で解決できる問題ではないと思います。
投稿: 工場長 | 2017年12月18日 (月) 19時05分
鯉の応援団さん
どんな工場であれ、廃棄物の処理も決まらない状況で操業が許されることはありません。それが、どうして原発だけが特別なのか、電力の需給の問題でもなければ、発電コストの問題でもないことは明らかですから、建前ではなく、本音で議論すべきことですが、こうした誤魔化しが全てのことについて多いように感じます。
投稿: 工場長 | 2017年12月18日 (月) 19時07分