カズオ・イシグロさんと二重のアイデンティティ
40年前になるだろうか、私がアメリカの大学にいたころ、
日本から来ていた留学生が
「私は18歳からアメリカに来ている。
英語は喋れるようにはなったけれど、日本人でもないし、アメリカ人でもない。
中途半端になってしまった」
と嘆いていた。
小さい頃から英語教育をすることにも、そうした類の反論があるようだ。
しかし現実は、国際結婚はどんどん増え、日本人としてのアイデンティティ云々をいっていられない状況が進んでいる。
それは日本に限った現象ではない。
国際結婚をした人にとっても、生まれた子供にとっても、
母国が曖昧になったとき、どうすればいいのかについての悩みは深いようだ。
こうした現象を「アイデンティティ クライシス」というらしい。
こうした現象が一般化する今、
日系イギリス人の作家カズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞したことの意味は大きい。
イシグロ氏は日本で生まれ、5歳からはイギリスで育ち、作品は英語で書いているそうだ。
今までは、生まれた国の文化の背景等がその人のアイデンティティとして、精神的にも社会的にも極めて重要なこととみなされ、そうしたベースがないと、根無し草になると思われてきた。
そうしたことに対して、イシグロさんは、「二重のアイデンティティ」として捉え、これからの社会のありかた、生き方について考えることを文学作品にまで高めてくれたようだ。
そうしたことが評価されてノーベル文学賞となったのだろう。
最近テレビでも「世界の村で発見、こんなところに日本人」という番組がある。
モンゴルの草原の中に住む日本人女性、アフリカの内戦のさなかに住む日本人etc.
が紹介され、人気番組となっている。
そこにはとてつもない苦労もあるはずだが、
それを面白さ、楽しさ、可能性としてしまうという逞しさが人間にはあるということを見せてくれる。
イシグロさんの作品『わたしを離さないで』はテレビドラマ化され、10月14日と15日にTBSチャンネルで再放送されるそうだ。
再放送では10月14日に1話から5話まで、15日に6話から10話までを一挙に放送され、
各日4時間を超える放送時間となるとのことだ。
大変な長さだ。
本国イギリスでは100万部を超えるベストセラーとなり、
2010年にイギリスで映画化、2014年に蜷川幸雄演出で舞台化されているとのことだ。
それならと、
小説「わたしを離さないで」をアマゾンで注文した。
中古しかないようで、2980円もした。
さあ最後まで読み切れるかな、
楽しみだ。
元安川
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初コメント失礼します。
カズオイシグロの作品は「私を離さないで」や「日の名残り」ほどには有名ではないのですが、「忘れられた巨人」もおすすめです。
中世ヨーロッパの幻想的で荒涼とした景色が、浮かび上がってくるような文章でした(翻訳ですが)
言語で読むほどの英語力がないのが残念なのですが。
非日常にひたる、という小説の醍醐味を体感できました。
一方的なおすすめコメントで、ごめんなさい。
投稿: itatchi | 2017年10月12日 (木) 11時15分
私の従兄弟もイギリス留学を経て、長くモンゴルに住んでいましたが、まさに「多様性こそ未来の力」ですね。
http://kokoro2016.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-ab69.html
投稿: 工場長 | 2017年10月12日 (木) 12時26分
Imachiさま
イシグロさんがノーベル賞をもらったことで、大増刷されるそうですね。
楽しみにしています。
投稿: 元安川 | 2017年10月12日 (木) 13時23分
工場長さま
モンゴルですか。
身内に海外にすんでいるとか、国際結婚をしたとかの話はよく聞きます。
アイデンティティ=ナショナリティ
という捉え方が融けつつあるようですね。
投稿: 元安川 | 2017年10月12日 (木) 13時30分
そのうち、日本人という在来種は絶滅するのでしょうか。
アメリカでは元々の在来種は、100年以上前から絶滅危惧種になってますよね。
投稿: ゲン | 2017年10月12日 (木) 13時38分
この人を知らなかったので、速報で日本人の氏名なのにカタカナで表記されていたから、日系の二世か三世の人なのだろうと思っていましたが、日本で生まれイギリスで育っち国籍を取得したと聞いて、ちょっとビックリしました。日本国籍から変えたことに。
この方の父親は、気象庁の研究者だったそうですね。イギリスの気象の研究で招かれたそうですね。
気象は地球を研究する学問ですから、国境という概念に影響を受けないのでしょうね。
もしかした、その影響を受けて、国籍に拘らず、自分らしさでいられるイギリ国籍を選ばれたのかなと想像します。
○○人とか、△△国人とで分類する時代ではなくなるのでしょうね。
生まれ地、育ってくれた地、そこの文化がその人の人間形成におおきな影響を与えるのでしょうから、生まれて死ぬまでその地を離れなかった時代は少なくなるのでしょうね。
もし、移動できずともネットで多くの情報が手に入り、影響を受けたら、やっぱり今までのような○○人と△△国人に縛られない世界になるのでしょうね。
そういえば、昔に読んだ江戸時代の生活に書かれた本は、日本人の作家がドイツ語で書き、それを他の人が日本語に翻訳したものでした。
英語が使える人が多くなっていますから、将来には英語で本を書き、それを日本語に翻訳して出版てのも増えるのでしょうね。
投稿: やんじ | 2017年10月12日 (木) 13時44分
ゲンさま
スポーツ界、芸能界では、すでにハーフ、クオーターの方が優秀だと証明されつつありますね。
純粋であることを証明する血統書付きペットは、弱いですよね。
どこの馬の骨ともわからないペットのほうが強く、優秀であったりしますね。
人間の世界では、そんなことより、混血が進むことで、世界が平和になればいいですね。
投稿: 元安川 | 2017年10月12日 (木) 13時57分
やんじさま
私は生まれてから、もう計10回引っ越しをしています。
アメリカにも住んだことがあります。
今やこんなことは珍しいことではなくなっているようです。
インバウンドは2020年には4000万人と予想されています。
新宿、銀座、浅草を歩いているのはほとんど外国人という感じです。
2020年は混血元年といわれるようになるのではないでしょうか。
投稿: 元安川 | 2017年10月12日 (木) 14時08分
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初コメント失礼します。
カズオイシグロの作品は「私を離さないで」や「日の名残り」ほどには有名ではないのですが、「忘れられた巨人」もおすすめです。
中世ヨーロッパの幻想的で荒涼とした景色が、浮かび上がってくるような文章でした(翻訳ですが)
言語で読むほどの英語力がないのが残念なのですが。
非日常にひたる、という小説の醍醐味を体感できました。
一方的なおすすめコメントで、ごめんなさい。
投稿: itatchi | 2017年10月12日 (木) 11時15分
私の従兄弟もイギリス留学を経て、長くモンゴルに住んでいましたが、まさに「多様性こそ未来の力」ですね。
http://kokoro2016.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-ab69.html
投稿: 工場長 | 2017年10月12日 (木) 12時26分
Imachiさま
イシグロさんがノーベル賞をもらったことで、大増刷されるそうですね。
楽しみにしています。
投稿: 元安川 | 2017年10月12日 (木) 13時23分
工場長さま
モンゴルですか。
身内に海外にすんでいるとか、国際結婚をしたとかの話はよく聞きます。
アイデンティティ=ナショナリティ
という捉え方が融けつつあるようですね。
投稿: 元安川 | 2017年10月12日 (木) 13時30分
そのうち、日本人という在来種は絶滅するのでしょうか。
アメリカでは元々の在来種は、100年以上前から絶滅危惧種になってますよね。
投稿: ゲン | 2017年10月12日 (木) 13時38分
この人を知らなかったので、速報で日本人の氏名なのにカタカナで表記されていたから、日系の二世か三世の人なのだろうと思っていましたが、日本で生まれイギリスで育っち国籍を取得したと聞いて、ちょっとビックリしました。日本国籍から変えたことに。
この方の父親は、気象庁の研究者だったそうですね。イギリスの気象の研究で招かれたそうですね。
気象は地球を研究する学問ですから、国境という概念に影響を受けないのでしょうね。
もしかした、その影響を受けて、国籍に拘らず、自分らしさでいられるイギリ国籍を選ばれたのかなと想像します。
○○人とか、△△国人とで分類する時代ではなくなるのでしょうね。
生まれ地、育ってくれた地、そこの文化がその人の人間形成におおきな影響を与えるのでしょうから、生まれて死ぬまでその地を離れなかった時代は少なくなるのでしょうね。
もし、移動できずともネットで多くの情報が手に入り、影響を受けたら、やっぱり今までのような○○人と△△国人に縛られない世界になるのでしょうね。
そういえば、昔に読んだ江戸時代の生活に書かれた本は、日本人の作家がドイツ語で書き、それを他の人が日本語に翻訳したものでした。
英語が使える人が多くなっていますから、将来には英語で本を書き、それを日本語に翻訳して出版てのも増えるのでしょうね。
投稿: やんじ | 2017年10月12日 (木) 13時44分
ゲンさま
スポーツ界、芸能界では、すでにハーフ、クオーターの方が優秀だと証明されつつありますね。
純粋であることを証明する血統書付きペットは、弱いですよね。
どこの馬の骨ともわからないペットのほうが強く、優秀であったりしますね。
人間の世界では、そんなことより、混血が進むことで、世界が平和になればいいですね。
投稿: 元安川 | 2017年10月12日 (木) 13時57分
やんじさま
私は生まれてから、もう計10回引っ越しをしています。
アメリカにも住んだことがあります。
今やこんなことは珍しいことではなくなっているようです。
インバウンドは2020年には4000万人と予想されています。
新宿、銀座、浅草を歩いているのはほとんど外国人という感じです。
2020年は混血元年といわれるようになるのではないでしょうか。
投稿: 元安川 | 2017年10月12日 (木) 14時08分