医療そして選挙
昨日のコメントは医療否定に読めたかも知れませんが、医療を否定するつもりはありませんし、なにより私自身が医療に支えられて生きてきました。
ただ、還暦も過ぎると、周りでも、あまりに医学を過信していたり、検査の細かい数値ばかり気にしたり、加齢による当然の肉体の劣化も受け入れられない人達が増えているので、医療に対して否定的な言い方が多くなりました。
長く私の主治医であった大手総合病院の院長は国際的な医療組織の会長も務め、私の診察中にも各国から医師が研修に来ていることがありましたが「人間の体で分かっていることは3%もない。医学統計で言えば3%の事象は「ときに」という副詞で表現される程度のものであり、医療が神社へのお参り以上に病気が治せるかどうかすら自信を持って答えられない」とおっしゃっていました。
流石に医療が神社のお参りと比較されるものとは思いませんが、深く研究している医師ほど「患者に言うかどうかは別にして、同じような気持ちだ」と何人かの、それも有能な医師から聞きました。
もちろん、謙虚さもあると思いますが、かかりつけ薬局の薬剤師も「薬の効果はあくまで集団に対する統計的なものでしかなく、その患者に効くかどうかは、誰にも分かりません」と言いますし「そもそも診断が正しいかどうかも怪しいものです」とも付け加えます。
「風邪は万病の元」という諺があります。確かに風邪の合併症はいくつかあるものの、風邪(ウィルスによる急性上気道炎)から何か別の病気になるわけではありませんし、多くは初期症状が風邪に似ている、というだけのことです。
ですから、体がだるくて熱がある、と受診すれば、医師は他によほど特徴的な症状や状況がない限り、とりあえず風邪ということにして、風邪のウィルスには何の効果もないものの、症状を抑え、覚せい剤のような成分も含み気分が晴れる「総合感冒薬」と称するものを処方します。そして、風邪であれインフルエンザであれデング熱であれ多くの感染症は4−5日も経てば薬とは関係なく自然に治るものです。
ちゃんと認可された薬でも作用機序(どうして治るのか)の分からないものはあり、私が難病でありながら治った血小板減少症の治療もそうでしたが、人体のことが分かれば分かるほど、メカニズムは分からないけど治るということもあり、そのメカニズムより、疫学のように統計学に頼ることも増えているように思います。まさに医療は占いと揶揄される所以です。
医学は他の科学技術に比べると、人体実験ができない、という大きな制約があります。動物から得られた結果が、そのままヒトに適用できるとは限りません。あるいは、臨床で得られるデータも、被験者は病気という特別な状況にある上に、数も限られます。
ですから、ガンなどは5人に一人が一定期間の改善を示すというだけで認可される場合もあり、私に対して、大手製薬会社の社長が太鼓判を押して勧めてくれた特効薬のように、結局は全く効かないもので、治験の時のデータは何かの間違いだったのでしょう、ということもありますし、何百万円もかかる先進医療にしても、何年かで効果を否定されるものも少なくありません。
もちろん、医療で確実に治せる分野もありますし、祈祷よりは随分ましだとも思いますが、一般的な期待度は実力より遥かに買いかぶられているようにも感じます。
ところで、イギリスの国民投票で、民主主義の危うさが指摘されています。
首相と違い、首長は住民による直接選挙で選ばれます。広島市民は三期12年、秋葉忠利市長を選んできましたが、タスキを渡すはずの市長に、市民が選んだのは松井一實市長でした。
ごく最近、亀井静香氏が「政策がいくら正しくても政権がとれないことは共産党を見れば分かる。行儀が良いだけではダメだ」というようなことを言っていました。水清ければ魚棲まず、ということでしょうか。
最近、妻がみている韓国ドラマは「悪人につくか、極悪人につくか」という問題が示されていますが、韓国でも人々が考えている正義の内容は同じです。その共通の正義が貫けないのは何が問題なのでしょうか。
人類の進歩が早いか、AIが支配する地球になるのが早いか、それとも豚が支配するのか、下手をするとあと2〜30年の勝負かも知れません。
今、行われている参議院選挙も決して無関係ではありません。
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