唯一の被爆国
「広島出身の岸田文雄外相が、世界各国の指導者や若者に広島、長崎への訪問を呼びかける文言を最終文書に盛り込むよう提案したが、中国の反対で削除された。」と、中国だけを悪者にするような報道が行われています。
秋葉前広島市長が「オバマジョリティ」という言葉を使った時、あれほど批判的であった広島のマスコミが、オバマ大統領の任期が切れる今頃になって「オバマ大統領」に呼びかけている意図は分かりませんが、少なくとも日本国政府は、その表向きの主張に反して、その行動は核廃絶に向かったものではありません。
ヒロシマやナガサキのヒバクシャが「唯一の被爆国」として被爆の実相を伝え、核兵器廃絶を主張し続けるなか、核兵器廃絶禁止条約締結の足を引っ張り続けてきたのが日本国政府(=外務省)です。
昨年末(2014年12月)の国連総会でも、アジアの核保有国である中国・北朝鮮・インド・パキスタンが賛成した核兵器使用禁止条約に対して、「唯一の被爆国」で被爆地である日本国政府は賛成することなく棄権しました。
更に、国際司法裁判所の「国際人道法の見地から見て核兵器による威嚇・核兵器の使用は一般的に見て国際法違反である」という内容の勧告的意見の後追いにも棄権しました。
日本が棄権した「国際司法裁判所の勧告的意見の後追い」「核兵器使用禁止条約」「2013年国連総会核軍縮ハイレベル会合の後追い」の決議はいずれも、核兵器禁止条約の国際交渉開始を求めています。
それに対し、日本が毎年のように提出し採択される「核兵器の全面廃絶に向けた共同行動」は「核兵器をいずれ廃絶しよう」というだけで、具体的な行動は求めていません。
松井一実広島市長は、それをもって「核兵器問題解決への糸口に手応えを感じた」と言い「ただ国際社会は足踏みをしているだけだ」と言います。
実は冒頭に書いたNPT(核拡散防止条約)の再検討会議の最終文書素案から削られた最も大きな項目は核兵器禁止条約の締結です。
これは「オーストリアの誓約」(核兵器の非人道性に関する国際会議を受けて、核兵器の禁止に向けて行動することを呼びかけるもの)に基づくもので、100カ国以上が賛成したものですが、これに対し安倍首相は「いたずらに核保有国との関係に溝を作り、一歩も理想に近づくことにならない」と反対を表明し、NPT再検討会議でも核兵器禁止条約に反対しました。
「国際社会においては、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在している中で、日本の安全に万全を期すためには、核を含む米国の抑止力の提供が引き続き重要」というのが日本政府の立場です。
確か、沖縄の琉球新聞の社説は「核禁止日本不賛同 二枚舌やめ、廃絶実現を」というものでしたが、広島ではどうだったでしょうか。
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