アジア・リーダーシップ会議2014
アジア・リーダーシップ会議2014
秋葉忠利
今年(2014年)の3月3日と4日に、ソウルでアジア・リーダーシップ会議2014 (ALC2014と略します) が開かれました。朝鮮日報社の主催で2005年から定期的に開催されていますが、今年のテーマは、アジア太平洋地域における成長と南北の統一でした。
参加費を払って参加した人が約1000人、スピーカーは世界から約150人ほどでした。冒頭に朴大統領の挨拶があり、基調講演はジョージ・W・ブッシュ元米国大統領でした。引退後は絵画に打ち込んでいることから始めて、退職後に新しいチャレンジに挑むのは大切なことで誰にでも勧めたいとのアドバイスもありました。また、米韓や米中等、アジア太平洋地域にある国々の間の二国間関係は、今までで一番円滑に進んでいると思うと述べたことが印象出来でした。強面で、「テロに対する戦争」をぶち上げたイメージとはかなり違う、冷静かつ合理的な判断をする人、という印象が残りました。
日本からは鳩山元首相が最初のパネル・ディスカッション「一つのKorea――新たな設計図を模索して」で発言し、それに続いて、2日にわたって合計9つのパネル・ディスカッション、そしてディベートがあり、多くの分野にわたって著名な学者や研究者、企業の経営者等の講演と議論、質疑応答があり、大変勉強になりました。
私が発言したのは、最後のパネル「非武装地帯・世界平和公園構想のユーレイシアに与える影響」でした。国と国との関係が問題になっているときに、国を超えた存在である都市の役割が重要になること、特に、平和公園をデザインするに当って、ハーバード大学のスティーブン・ピンカー教授が彼の著書『The Better Angels of Our Nature』で指摘した、世界を平和な方向に動かしている5つの力を生かすことが大切になる等、日頃からの持論をお話ししました。
しかし、今回の会議での一番の収穫は、話し合いや交渉の大切さを確認できたこと、つまり、いたずらに感情に走り敵対関係を強調するのではなく、共有できる事実を元に論理的に整理した対話を通して道が開けて行く有様を目の前で再確認できたことです。それは、幾つかのパネル・ディスカッションの最初と最後に、「Yes」か「No」かの二者択一のアンケートに答える機会があったからです。参加者全てに配られたSamsungのタブレットGalaxyにタッチすれことで意思表示ができたのですが、その集計が瞬時に前面のスクリーンに映し出されました。
例えば、第二番目のイベントで、二人の専門家が意見を述べ合ったディベートのテーマは「金正恩のジレンマ、選択そして未来」でしたが、この会の始まりと終わりに、参加者が次の問にYes」か「No」で答えました。
「金正恩政権の改革が実現し開かれた政権になる可能性はあるか」
答は、ディベートの前と後とで大きく変わりました。
午後に行われた第一日目最後のパネルは、「韓半島と三国間関係」というテーマで、日中韓の三か国の関係がテーマでした。日中韓三国、それぞれ一人ずつの専門家が自国の立場を主張しました。中韓の専門家は、靖国問題、慰安婦問題で日本が誠意ある対応をすることが、これからの二つの二国間の対話の前提だと主張し、日本の専門家は、とにかく、対話を大切にすること先ず対話を始めることで道が開けると主張したため、最初から最後まで、意見そのものは変わりませんでした。しかし、パネルの中では、これまでの三国間の関係や歴史等についての事実も確認され、また、相手の非難に終始するのではなく、加えて三人とも、解決策としての武力の行使は否定するなど、大人の対話が成り立ったため、「Before」と「After」の意見の違いは、対立から協調へとかなりの程度変わりました。
質問は「韓国と日本の間の緊張は、武力衝突にまで発展する可能性があるか」そして「中国と日本の間の緊張は、武力衝突にまで発展する可能性があるか」でした。
パネル・ディスカッションの前と後では、それぞれ10パーセントもの人が、紛争は起きないという意見に変わっています。会場に入れたのは約600人から700人ですが、2日目のほとんどが、経済と起業についてのパネルだったため、参加者の多くは大学生そして、起業に取り組んでいるビジネスマンも含めて、ビジネスに関心のある若者でした。
それなりの知識はあるのでしょうが、どちらかというとメディアを通しての国際関係を自然に受け止めている人たちだったように思います。その人たちが、より正確な知識を得たこと、それに加えて、目の前でまったく意見の違う専門家たちが、対話によって相互理解ができるという暗黙の前提を元に、冷静に事実に基いた意見の交換をしている姿に触れたことが一番大きかったのではないかと思います。
ALC2014は私にとって、話し合いがいかに大切かを再確認する機会になりましたが、その点を若者たちに伝える際に、「話し合いが大切だ」とただ単にスローガンを掲げるだけではなく、彼ら/彼女らの目の前で知的で未来志向、そして建設的な話し合いを実際に行い、それをその場で見て貰う経験がいかに大切なのかも示してくれたように思います。
もう一つは、南と北の統一のために、非武装地帯を大平和公園とする構想が進められ、世界中の有識者たちを巻き込んでのこれほどの規模の国際会議を開催するほどの熱い思いが韓国にあることは、混沌とした世界に射す一筋の光のように見えました。確かに日韓の間にはいくつもの大きな問題がありますが、このような未来志向の動きに、歴史的にも地理的にも多くの関わりを持つ日本社会がもっと積極的に関われないのか、特に若い世代が関心を持ち世界的な広がりを創るために努力できないのか、それにはどうしたら良いかという宿題も貰ったような気がしました。
参考までにその他のパネルのテーマは、「Korea の統一とアジアの繁栄のための大戦略」「成長への回帰?――アジアと世界経済のこれから」「アジア太平洋の経済に、統一されたKoreaが及ぼす影響」「成長のための新しいエンジン――アジアにおける創造的経済」「アメリカと中国は協力できるか」でした。
最後に、今回のグラフは、ALC2014から頂いた数字をお渡しして工場長さんに作って頂きました。工場長さん、有難う御座いました。
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