コンピュータが人間を負かす?
日本将棋連盟会長の米長邦雄永世棋聖(68)とコンピューターソフト「ボンクラーズ」の特別公式対局「電王戦」が今月14日、東京都渋谷区の将棋会館であり、ボンクラーズが113手で戦いを制しました。
コンピュータはオセロのような単純なゲームでは、早くから人間のかなわないものになっていましたが、1997年にIBMが開発したディープブルーがチェスの世界チャンピオンであるカスパロフを破った頃でも、将棋の方は、まだアマチュアが楽に勝てるレベルでした。
将棋はチェスと違い、取った駒を使えるなど、遥かに複雑なゲームだからです。
それから10年後、渡辺明竜王と公開対局をしたコンピュータは勝つことはなかったものの、奨励会三段レベル(プロの一歩手前)との高い評価を受けましたが、その時のソフトが今回、電王戦で米長邦雄永世棋聖に勝ったボンクラーズの親とも言えるボナンザでした。
ボナンザは2005年トロント大学の研究員であった保木氏が趣味で開発した将棋プログラムで、保木氏は将棋について殆ど知識のない初心者だったといいます。
その将棋初心者の「ボナンザ」が、ブレークスルーになったのは、これまで将棋に詳しい人が行なってきた「前向き枝刈り=選択的探索=棋風」というものを排除し「どんな手でも取り敢えず読む」という単純な「全幅探索」を採用したことにあります。
もちろん、それはコンピュータ自身の性能の向上があって可能になったことですが、ボナンザは2006年の世界コンピュータ将棋選手権大会に初出場し、チューンナップされていない市販のノートPCにインストールされて参加し、いきなり優勝し、話題をさらいました。
そして2009年にはオープンソースとして公開され、その流れをくむプログラムの一つが、今回のボンクラーズというわけです。
ボンクラーズはボナンザの改良に加え、並列化=合議制に特徴があるようです。合議制については「お互いの決定を潰し合い、特徴のない凡庸な手しか指せなくなる」という懸念を払拭し、「決定的なミスを防ぐ」ことに有効に働いてるようです。まさに民主主義の決定プロセスと言えます。
ただ、この10年の将棋プログラムの進歩は目覚しいものですが、決して「機械が人間に勝った」わけではなく、これも人間の進歩の一つとみるべきでしょう。人間の可能性は無限です。
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並列化=合議制=民主主義
という展開が面白いですね。
投稿: 元安川 | 2012年1月27日 (金) 05時14分
元安川さん
奨励会=日本将棋連盟の4段以上になると相手が名人であっても勝っても負けてもおかしくないレベルになります。それは人間はミスをすることに起因します。空間的に全体像を把握する能力(=直感)は今のところ人間の方が上ですが、コンピュータの強みはミスをしないことです。それを合議制で更に補強し人間に勝てるレベルになっています。
人間の力が強大になり、僅かなミスでも致命的になる社会ほど、民主主義が重要になります。閉塞感から「独裁」を望む風潮には危惧を覚えます。
投稿: 工場長 | 2012年1月27日 (金) 08時12分
ボンクラーズは将棋倶楽部24で24時間対戦をしているので何度か見ましたが、本当に強いです。将棋倶楽部24は早指しなのでコンピュータに有利とは言え、勝率は9割です。八段クラスの勝率が5割から7割ですから、やはり圧倒的な強さです。しかも中盤からの強さは半端じゃなく、入玉含みになると微妙な判断もありますが、人間と違って強くなる一方でしょうから人間が全く敵わなくなるのも時間の問題でしょうね。
投稿: 星野 | 2012年1月27日 (金) 08時46分
星野さん
将棋の強い知人は柿木将棋が出た時に「やっと遊べるレベルになった」と喜んでいました。しかしボナンザ以降「全く勝負出来るレベルではなくなった」と言っています。ボンクラーズと対戦出来るというレベルが県大会レベルだとか。
ただ殆どの棋譜はデータベース化され、コンピュータによる解析もし尽くされているにも関わらず、未だに完璧な手というのはないようで、それだけ将棋というのも奥が深いものだということを改めて知らされます。
投稿: 工場長 | 2012年1月27日 (金) 08時55分
民主主義は自らの中に「言いたい放題➡閉塞感」という癌細胞を抱えるというのが、また面白い指摘ですね。
投稿: 元安川 | 2012年1月27日 (金) 14時42分