被爆者ドキュメント映画・2題
世界の国々を船で訪ねるピースボートの「ヒバクシャ地球一周・証言の航海」を舞台に二人の若い監督が製作したドキュメンタリー映画の上映会が開かれた。
NGOのピースボートは長い歴史の中で初めて‘08年9月から4ケ月に渡る航海で103人の被爆者を招待し、一般乗船客800人と一緒に20ケ国を訪れ、核廃絶を訴える活動に取り組んだ。
この航海にコスタリカと日本の若い監督が同行し「原爆について何も知らない人」に向けてそれぞれの思いを込めて完成させた記録映画を、全国巡回して上映している。
軍隊を持たない平和な国として知られるコスタリカ生れで米国の大学院で映画製作を学び、母国で社会派映画の製作に取り組んでいるエリカ・バニャレロ監督(29)は『フラッシュ・オブ・ホープ~世界を航海する被爆者たち~』(61分)を制作。核兵器のない世界への“希望の光”(タイトル)に願いを込めた…。彼女の制作意欲を掻き立てたのは「広島・長崎の惨状は戦争を終わらせた」という中学の教科書2行の記述だった
被爆者の意味を正確に解きほぐしながら、カナダ在住の被爆者サーロ・節子さん(78)の「核兵器は人類と共存できない」怒りと核の恐ろしさを、素直に伝えている。
船旅に参加した英、米、豪の専門家の解説と自作のサダコのオリジナルアニメやアニメ映画「はだしのゲン」に被爆者が書いた絵のどを上手に使いこなして、ヒロシマ・ナガサキは知っているが『そこで何が起き、どうなったのか』を知らない人達が「核兵器の恐ろしさ」が理解できる内容にまとめている。
核問題の入門教材として世界各国での活用が期待されており、日本の中高校などでも十分活かされる作品だ。
『ヒバクシャとボクの旅』(64分)は、かつて広島修学旅行で被爆者の証言を聞いても「どうすればいいのか分らなかった」と言う国本崇史(29)監督が被爆者との船旅を通じて「被爆体験の継承とは何か」をテーマ描いた作品。
ベトナムで枯葉剤被害者の話を聞いて「どうすればよいか分からない」と悩む被爆者に、監督自身が「自分と同じもの」を感じる。
被爆当時3~4歳以下で被爆の記憶がない被爆者は、自分達が何をすれば良いのか悩み、船内で話し合いを始める。
被爆の記憶を持たない若年被爆者は学習による追体験をしない限りなのも知らない非被爆者・関心を持たない、何も知らない一般人と同じ…と気付き始める。
そして、見る人それぞれに『私たちは何が出来るか』を投げかける。
5月3日から国連で始まるNPT再検討会議に合わせて、世界から参集する人達を対象にニューヨークでも上映する。
二人の監督は『核兵器で何がもたらされたのか、世界はそれを知り、継承の義務がある』と言い、「被爆者から聞くだけでなく、一緒に何が出来るか考えなければいけない」その為のヒントに是非見てほしいと訴えた。
横浜、山口、長崎と上映して来たエリカ・バニャレロ監督は空席の目立つ会場を見渡して“残念“と繰り返した。広島で多くの観客を期待していたことをうかがわせると共に『核兵器廃絶への道』への厳しい現実を実感させた?かに見えた。…。
ピースボートは今後も全国上映を展開しながらこの2作品のDVDをセット3千円で販売すると共に個人やグループでの上映権を2本セット3万円で販売を始める。
また、ピースボートは、現在『ヒバクシャ地球一周-第三弾』を展開中だ。
こんな厳しい時期に平和活動に積極的な取り組みをするピースボートに敬意を表すと共にDVD普及と同時に上映を希望する学校への貸出にも取り組んで欲しいと期待する。
<問い合わせ>
ピースボート『ヒバクシャ地球一周』プロジェクト:担当・森田あさと
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場3-13-1-B1
http://www.peaceboat.org Tel:03-3369-7561
E-mail: info@peaceboat.gr.jp
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