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2010年5月24日 (月)

オリンピックのバーチャル化 ―施設規模は小さくてもいい?

5月15日号の週間東洋経済に、様々のスポーツをビジネスという観点から分析した記事が載っていた。
私の普段の生活にあっては、スポーツはカープが昨晩の巨人戦で勝ったとか、松坂がアメリカメジャーリーグで2勝目をあげたとかのニュースに一喜一憂する程度だ。
スポーツのビジネスとしての側面に触れることはまったくない。

そのスポーツビジネス特集の中に、ちょっと考えされられる記事が載っていた。
国際オリンピック委員会IOCの収入の推移だ。
1993年から96年までの4年間の収入は、
放映権料12億ドル+スポンサー収入8億ドル+チケット収入5億ドル+ライセンス収入1億ドル=26億ドルだった。
それ以降も年々増え続け、
2005~08年にあっては、
放映権料25億ドル+スポンサー収入25億ドル+チケット収入3憶ドル+ライセンス収入2億ドル=54.5憶ドルだという。

1_5

1ドル93円として換算すれば、54.5憶ドル→5068.5憶円にもなる。
凄まじいビッグビジネスになっているということがわかる。

その収入も年を経るごとに、大幅に増えていることもまた驚きだ。

その収入の内訳をみると、これもなかなか興味深い。

チケット収入は、05年から08年度にあっては、約3億ドル×93円→279億円だという。
この額は、広島アジア大会の収入とそれほど差がないようだ。
北京オリンピックで販売されたチケット枚数は700万枚だといわれているから、1枚あたり約4000円ということになる。
チケット収入とは、会場に来た観客からの収入ということだろうが、その収入がIOCの全体の収入からみれば、たったの5.5%にしかなっていないというのだ。
これには驚いた。

北京オリンピックの競技のスタート時間がアメリカのTVの都合で決められたと批判されたが、この収入の内訳をみれば、そりゃ当然だろうと頷ける。

オリンピックはそもそも1896年、クーベルタン男爵の呼びかけで、アテネでオリンピックが開かれたことに始まるが、以来、オリンピックは頑なにアマチュアイズムに拘ってきた。
そしてその当時の収入源は、もっぱらチケット販売収入だったと思われる。
そうしたこともあってか、オリンピックは財政的にも苦しくなり、開催に名乗りを上げるところもなくなったようだ。
その危機を救ったのが1984年のロサンゼルス大会のピーター・ユベロスだ。
オリンピックをショービジネス化したことで、大会は結果として2.1億ドルの黒字を計上した。
それだけでなく、選手にとってもオリンピックは名誉だけでなく、大きな収入をもたらすようになったようだ。
今年のバンクーバーオリンピックで優勝したキム・ヨナ選手は今年の年俸が8億円だといわれている。
そうした現象は、1992年のバルセロナ大会では、バスケットボール種目ではアメリカのNBA所属の選手による「ドリームチーム」が参加したりするようになり、オリンピックはまさに全てのスポーツの最高のレベルの競技会になりつつある。

そのロサンゼルス大会以降、「オリンピックは儲かる」との認識が広まり、立候補都市も激増し、開催都市となるために、国をあげて応援するようにもなった。

こうした大きな変化は、見方をかえていえば、オリンピックというスポーツのイベントが、今ではその会場に来た観客だけのイベントではなく、TVを見る人、新聞を見る世界の人、世界の人々を対象にするイベントに変貌したということでもある。

オリンピックが、会場に来た観客700万人を対象にしたイベントから、会場にはいないが、TV、新聞をみる観客60億人を対象としたイベントに変貌したということだ。

「オリンピックがバーチャル化した」ということだ。

ということは、いまや闇雲にオリンピック競技会場を大きくし、チケット収入の増加だけに拘る必要もなくなったということでもある。

オリンピックにとって、より重要なことは、広告収入を、スポンサー収入を増やすためにどうしたいいのかということのほうに比重が移ってきたということだ。

世界の人々が見たいと思うような世界的レベルの選手をどうしたらが集められるのか、その一流の選手がどうしたら命をかけて競うような状況をつくりだせるのか、その会場にいる観客の興奮をどうしたら作り出せるのか、それをどうしたらうまく世界に伝えられるかを考慮することで、が、より極めて重要になってきたと言えそうだ。

そうした様々の要件を満たすために、どのようにカメラ席、新聞記者席をつくればいいのかということでもあるだろう。
それは場合によっては会場にいる観客席よりも重要な場所に設置されることもあるだろう。

近年のネットの変化も凄まじい。
ネット時代への対応の仕方も、オリンピックのあり方を大きく変えるだろうと思われる。
しかしまだそのネット時代のオリンピックの姿は見えてはいない。

いずれにしろ、オリンピックがよりバーチャル化する方向に進んでいることは確かだ。

広島にオリンピックを誘致しようとするとき、このオリンピックのバーチャル化という現象を、どう反映させるかは、これからの大きなテーマだろうと思う。

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