鶴瓶主演の映画「ディア・ドクター」に寄せて
落語をしない噺家と言われる笑福亭鶴瓶が主演し、いま注目の広島出身の若手女流監督がメガホンを取った映画「ディア・ドクター」を見た。
鶴瓶はいまやNHKの「家族に乾杯」やTBSの「A‐studio」などで絶大な人気と知名度で高視聴率を稼ぎ出しており、欠かさず見るフアンの一人になった。
京都産業大学に在学中に六代目の笑福亭松鶴に入門し、関西のラジオでお笑いタレントとして売り出した。パンチパーマが爆発したようなカーリーヘアにGパンのツナギで落語は語らず専ら司会業やパーソナリチィーで徐々に全国ネット番組に進出し、俳優としても頭角を現し始めていた。‘08の「かあべい」や「私は貝になりたい」昨年の「ディア・ドクター」に近日公開になる「おとうと」も早くから評判を呼んでいる。
「トラック野郎」や「釣りバカ日誌」にも出演しているが、俳優・鶴瓶を意識的に見たことはなく初めての主演映画として観た。
作品はノートルダム清心中・高校から早稲田に進んで映画界入りした安佐南区出身の西川美和監督(36)の原作・脚本。西川監督は‘02年に「蛇イチゴ」で監督デビューし数々の新人賞や脚本賞を得た。次々に取り組む作品も国際映画祭などでも受賞し、同時に作家・書評家としても才能を発揮している才媛だ。東京にいては集中できないと脚本の執筆に掛かると広島の実家に籠って取り組むという。いま注目の若手女流映画監督だ。
山間の小さな村から一人の医師が消えた。無医村だった高齢者の村にやってきて、献身的な働きぶりで信頼されてきた…。しかし、警察が捜査を進めるうちに誰も知らない事実が浮かび上がってくる…。
僻地での医師不足という社会問題を扱った作品。医者の息子に生まれながら医師に成れなかった男が“ニセ医師”として高額の報酬を目当てに入り込んだ。医療機器のセールスマンとしての知識を活かして胃カメラやレントゲンを操作し、経験豊かで腕のいい看護師の助人もあって信頼を高める…が、医師の娘に自分の病気を隠そうとする独居老人の診察を巡って“ニセ医師”は自分の診断がもたらす結果が怖くなり身を隠す覚悟をする…。
鶴瓶のキャラクターが存分に生かされた人間ドラマは現代世相を厳しい目でえぐりながらも人の繋がりや優しさに視線を注いだ暖かさに溢れた、見ごたえのある作品だ。
昨年の暮れに、広島出身の映画の美術監督・部谷京子さんらが始めた『ダマー映画祭 in ヒロシマ』でも西川監督の講演と作品上映会があった。映画製作に熱い思いを抱く広島出身の女流監督と美術監督のコンビが遠くない日に広島を舞台にした映画作りに取り組む…と、この映画を見て、勝手に期待してしまうのは、早すぎるだろうか?
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