旅館・石亭と粋
料亭旅館・石亭は山陽自動車道大野ICを出て、ちょっと東に戻ったところ、宮浜温泉の一角にある。
数Mもあろうかという大きな岩の門の脇に小さく石亭と書かれた看板がある。
玄関を入り、薄暗い廊下を通って部屋に案内される。
廊下は部屋の建物とは微妙に離れて造られている。
昼間は、廊下の屋根と部屋の建物の間から漏れる光が明かりとなっている。
各部屋は元々離れとしてつくられ、廊下は後からその離れを繋ぐ渡り廊下として作られたのだろう。
廊下は部屋を通り過ぎる毎に折れ、その角の床には明かりが置かれている。
建物も廊下も天井は低く、柱は細い。
部屋は小さく狭いが、どこかゆったりしている。
各部屋の出入口の格子戸の前には大きな鉢が置かれ、生花が活けられている。
庭に面したガラス戸を開けると、よく手入れされた庭の向こうに瀬戸内海、宮島が望める。
縁側を降り、庭に出る。
踏み石の間は芝生が植えられている。
芝生?
いわゆる日本庭園ならコケが生えているべきところだろうが、ここは芝生だ。
芝生の中はフカフカとして、気持ちがいい。
和風の庭に洋の芝生だ。
上手い使い方だ。
9月も下旬というのに、まだ夏の暑さが残っていた。
部屋の中はエアコンが効いていて、快的だ。
こうした数寄屋作りの建物ではエアコンの室外機とダクトを見えないようにするのに苦労する。
ここではどうしているのだろうかと探すがなかなか見つからない。
やっと見つけた。
建物は斜面地に建っているので、海側の床下がいく分高くなっている。
その高くなった床下に室外機を置き、それを植木で隠している。
憎い配慮だ。
殆ど1階分の高さが取れる床下には、ゆったりした椅子がおかれ、ちょっとした読書ができるようになっている。
或いは緑で覆われた空間になっていたりする。
大風呂には露天風呂もある。
風呂に入ってからの料理は格別だ。
美味い。
車で来たので、酒が飲めないのが残念だ。
土産に「石亭」ブランドのお酒を買って帰った。
各部屋にも露天風呂が作られている。
トイレの脇の狭いスペースに作られた階段を2階に上がると、ヒノキのゆったりとした露天風呂が作られている。
お風呂からは瀬戸内海が見られる。
各部屋についている部屋の露天風呂は、最初から作られたものではなく、3年前に作られたのだという。
上手く作ってある。
後から作られたというが、不自然さは全くない。
ここでは建物は時代と共に、変幻自在にその姿を変えていっている。
この石亭ができたのは昭和38年だというが、それ以来あちこち少しずつ手直しして来たという。
黒光りする柱は相当に古いが、痛んだところは新しい木に変えられている。
そのコントラストが又微妙な美しさを作り出している。
この施設の手入れは大変だろうが、それがまた日本建築のいいところだ。
日本の文化は侘びと寂だといわれるが、石亭はどこかシャレている。
豪華ではないが、侘び寂とも違う。
あちこちに心憎いほどの心配りがされている。
お金も結構かかっているはずだ。
これを「粋」というのだろう。
「粋な日本文化」がここ石亭にはあった。
広島市内には、かっては何軒もの古い木造建築の料亭があったが、バブルがはじけ、社用族がいなくなると、殆どが廃業してしまい、マンションやオフィスビルのRCの建物に代わってしまった。
お客が変われば、建築も変わるということだ。
ここ石亭から、新しい「粋な広島の文化」が生まれている。
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