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2009年6月19日 (金)

アニメ原爆映画「太陽をなくした日」

 ヒロシマ・ピースフォーラム講座で原爆アニメ映画「太陽をなくした日」を見た。

 制作者の前田稔さんは’70年生まれ、今年39歳の被爆二世。大阪の専門学校のアニメ科を卒業し、広島でイラストレーターとして活動しながらアニメ映画の自主製作に取り組んできた。’02年に製作され、第九回(‘02年)国際アニメーションフェスティバルの招待作品に選ばれた19分の短編だ。
 
 舞台は広島市の中心部から2キロ足らず北部の横川駅北側の商店街、その周辺。背の低い木造の平屋や二階建てが並ぶ古い町並み。戦争が激しくなり空襲の危険が高まると大火災が起きる心配から、町内会・隣組が協力して防火訓練をした。若い男は兵隊に行っていて地域の主婦でつくった婦人会が中心になった。空襲で火災になった場合の防火帯の為に建物を壊して空地をつくる建物疎開は全国の都市で行われた。8月6日の広島でも中学生、女学生が建物疎開に動員されて作業中に多くが被爆死、命を奪われた。
 高学年(3~6年生)は空襲の危険を避けて集団で地方の学校やお寺などで先生が引率して合宿する学童集団疎開が行われた。集団疎開した学校は兵隊の駐屯地になり、校庭は食糧確保のためのイモ畑になった…。
 そんな環境の下で低学年の学童や就学前の子供達は町内で知恵を絞っていたずらをしながら遊びまわる。作品の90%が被爆前の日常で、言葉やスーパーの字幕もほとんどなく、坦々と展開される。突然、日常のすべてが爆発し街が消える…。
 しかし、被爆後の目を避けたくなるような惨たらしく悲惨な場面は最小限にとどめて描き、ENDマークもがないまま終わる…。

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 前田さんの話では、アニメ制作を目指した時から「言葉を超えて動きで判るアニメで世界に立ちたい」との思いで、10年かけて完成した。制作の動機は子どもの頃から家族や親戚が集まると祖父母や父をはじめ10人以上の被爆者が「あの時、どこで何をしていたか…」互いに語る被爆体験を聞いて育った。逃げる途中で『勉強道具を忘れたと言ったら“もう学校は壊れて無い”と言われ“宿題は無いんじゃ…”と嬉しかった』と言う話に共感した。

 一方、学校の平和教育を受ける中で身近に被爆者を知らない子供達は悲惨な映像に怖がり嫌がって「よそごと」と思っているものが多くいた。そうしたヒロシマを知らない人にアニメでどう伝えるか考えた。子供の日常なら想いを重ねられると気づいた。

 アニメではとかく簡略化される背景に時間をかけて取材をし、被爆当時をひとつひとつ丁寧に再現しているのは、消えた物が何だったのかが判り易くするための努力が見える。
ENDマークに代わってこのアニメをきっかけに“続きを知りたい”と思う人、広島から何が消えたか?“戦争と平和”について考える人が一人でも増える事に思いを寄せ、丁寧にしかも、緻密に表現しているのは他のアニメでは見られない特筆事項だ。
 
 ~主人公達の暮らす町について~と言う時代の用語解説がついている。<防火訓練><建物疎開><学童疎開><金属供出>など当時を理解する為の解説手引きだ。 
私達の年代の年代にとってはほとんど必要ないものだが、若い人や外国人にとっては欠かせないメッセージで、外国人用には多言語化も期待したい。

 “ヒロシマ・アニメ・フェス”の提唱者で原爆アニメのバイブル的作品と言われる木下蓮三さんの「ピカドン」も全くナレーションも字幕もない作品だが、広島で何が起きたのか…を十分に伝える10分だ。
 
 取材に出かけた東欧の小学校で上映したら、人間が溶ける場面で悲鳴を上げた校長が、上映にストップをかけた。「人間が溶ける…」恐ろしさは考えられず、教育上、好ましくない…との抗議だった。
 人が溶けた事実はともかく『溶けるに十分な5千度もの高熱が地表を焼いた事実』に、校長は生徒の前で、再び大声を上げた。『ヒロシマに申し訳なかった…』と最初から再上映をして子供達に改めてその事実を教えた。
 アニメが教える強烈な力を知った瞬間だった。
 
 「太陽をなくした日」は「ピカドン」のような強烈なインパクトはないが、戦争や近代史を知らない子供達、平和教育を受けたことのない子供達にヒロシマを教えるには打って付の教材だ。
 消えた広島を知り、そのあと被爆者に何が起きたのかを知る手だても少しだけあると親切だ。熱線と爆風は描かれている。原爆が他の爆弾と決定的な違いは“放射線被曝”である事の手掛かりを、解説に少しだけ記しておいてほしいと思う。
この作品が、より活かかされる為に、敢えて希望を留め、改めて拍手とエールを送る。

 DVDが発売されている。前田さんのHPから覗き見も出来る。
<前田さんのHP:スタジオみのる>  http://www15.ocn.ne.jp/~stu-mino/

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