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2009年3月28日 (土)

金賢姫(キム・ヨンヒ)のひと言

 北朝鮮に拉致された田口八重子さんの兄と田口さんの長男が大韓航空爆破事件の実行犯で、嘗て田口さんから日本語の教育を受けた元北朝鮮の工作員・金賢姫(47)と面会した。
 「お母さんは生きています。希望を持って…」と肩を引きよせ涙する金元工作員の言葉は拉致家族や救援活動をする人たちへの励み<新聞の見出し>になった…のだろうか?

 なぜ、今頃こうした面会が実現したのか?背景は一年前に韓国政権の交代にある。北朝鮮との融和政策を掲げた金大中と盧武鉉政権は拉致問題に対する見方は冷ややかだった。
 金元工作員の発言を封印して来たといわれている。一方、日本との友好を重視する李明博政権は北朝鮮の核や拉致問題で日韓の協力を強める方針の当面の結果?だろう。

 テレビも新聞も大々的な報道をしている中で目立っていないが金賢姫の発言で、日本にとって大変重要だと思う部分がある。
 『日本政府のこれまでの取り組みを見ていて、北韓の自尊心を傷つけないようにしながら、(北朝鮮が)心を動かす方法を考えるべきではないかと感じた』 と言っている点だ。
 彼女は「“制裁による圧力”一辺倒に傾いている日本の北朝鮮への対応の有効性に疑問」を投げかけている。
 政治や社会から遠のいて韓国で息をこらして生きて来た彼女が日本の北朝鮮施策を見た率直な感想を述べたように思う。私は従来から“日朝平壌宣言”に立ち戻って仕切り直すのが筋だ…と主張してきただけに、強く同感する。

 先日、会った在日韓国人の平和活動家が同じように拉致問題解決のスタートラインは‘02年の「平壌宣言」から…と言っておられた。金賢姫の発言は正しく同じ意味と理解した。

 02年9月の小泉首相・訪朝時の「日朝平壌宣言」は『不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し実りある政治経済文化的関係を樹立する…。日本は過去の植民地支配によって朝鮮の人々に多大な損害と苦痛を与えたと言う歴史の事実を謙虚に受け止め痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明…』として経済援助や無償資金協力の協力に人道支援、さらには核問題に拉致問題などの解決を掲げている。

 先に起こした問題解決から着手し、徐々に並行して緊急な拉致問題にも手を付ける…と言うのが、外交交渉でなくても誰の目から見ても当然の事だろう。歴史認識に大きな差があるとしても、平和条約をいつまでも放置しておくわけにはいかない。

 しかし、日本は北朝鮮の事ある度に“制裁と圧力”を繰り返し、平和交渉に手を付けないまま、結果的に拉致被害者問題も6ケ国協議など他力にお任せ状態にして来た。
 北朝鮮はいずれ解決する対日平和交渉は日本の対応を逆手に取って引き伸ばしてきた。
 それは、援助金の引き上げ策という指摘もある。
 その裏で北朝鮮は日韓会談の解決時の10数倍~百倍を要求する…と、まるで日朝交渉が前進できないような雰囲気…が、まことしやかに言われてきた?

 最初に日本が仕掛けた植民地化とそれに繋がる諸問題は日韓会談にそって解決を進めれば、いずれ北の本音も出て解決せざるを得なくなる。その為には「制裁と圧力」だけではでは一歩も進まないことは安倍、福田、麻生の三内閣の5年間の空白で証明されている。
 日本が米国などに依存しない独自外交を進めるべきだ。

 金賢姫はこの事実を指して“もっと知恵を出せ・筋を通し、北が避けられない条件で押し込め”と言っていると受け止められる。
 何よりも彼女が言う“自尊心“は日本に多くの技術と文化を伝えた歴史と伝統を持つ、誇り高い民族のプライドを意識的に”くすぐり“活用してはと示唆しているのではないか。

 ここ数年間、胸に青いバッジを付けて北朝鮮の理不尽さに口角泡を飛ばす議員さん達の正義の力?が少しでも発揮されただろうか。大局を見ないで留守家族に対する同情的なお為ごかしに終わっているのでは?

 北朝鮮は核放棄交渉を遅らせ、いまミサイルの発射で関係国を混乱に巻き込んでいる。
 これらと全く切り離して「日朝平壌宣言」に基づく交渉が今すぐ開始できるかどうか微妙な外交問題である。

 しかし、金賢姫が示唆した小泉訪朝で交わした「日朝平壌宣言」に一刻も早く立ち戻った協議・交渉を進める必要性があることも忘れてはならない…と考える。

 “金賢姫のひと言”は日本政府と青バッジの議員さんたちに耳を傾けて欲しい、歴史と現実を見つめた冷静で正しい判断と言えるのではないだろうか。

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