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2008年10月29日 (水)

推奨映画「マンデラの名もなき看守」

 映画「マンデラの名もなき看守」を見た。平日の午後5時過ぎからの1回だけの上映だからだろうか、上映開始から1週間を過ぎたのに60人を超す人が並んでいた。

 南アフリカ共和国で黒人の自由と権利を獲得するため闘い続け、27年間の投獄生活の後に初の黒人大統領となりノーベル平和賞を受賞したネルソン・マンデラを一介の刑務所の看守の目を通して描いた、人間の本性を浮き彫りに心を揺さぶる作品だ。

 多くの映画製作希望の中から90歳を迎えたマンデラが初めて自身の人生の映画化を許した記念すべき作品で、独逸、フランス、ベルギー、イタリアに南アフリカの5ケ国が参加しての共同製作は異例だ。

 映画は既に世界で知られているマンデラの輝かしい功績でもノーベル賞受賞の栄誉でも大統領に選ばれた歓喜でもない。マンデラが刑務所の中から改革運動を指揮し続け、表舞台で南アフリカが変革していく以前の“囚われの27年間“である。

 刑務所の下士官グレゴリーは最悪のテロリストとされているマンデラの担当に抜擢される。マンデラの故郷近くで生まれ育った彼は黒人の言葉が判る為、マンデラに来る手紙や文書に会話までチェックして報告する…スパイ的な監視役だ。
 凶悪なテロリストと教え込まれ、それを信じて任務に忠実なグレゴリーはマンデラに厳しく接する。 しかし、彼らが主張する“憲章”を、身分を隠して図書館で密かに検証して彼がテロリストでなく自由の為に闘い犠牲を払っている事を知る
 マンデラは過酷な独房でありながら自宅の書斎に居るかのように堂々と振る舞う。グレゴリーはマンデラの闘いに一層魅了され、彼が目指す平等な社会に憧れて行く。
  
 しかし、マンデラに傾倒していることが上司に知られれば、評価を受けている今の立場も妻子の安全さえも脅かされ兼ねない。
 家族や仕事・国や良心…葛藤の中で妻に“正しい歴史の一部でありたい“と打ち明けその意思を貫いた看守グレゴリーとマンデラの数十年に渡る魂の交流を描く感動作だ。

 たった1割余りの英国系白人がダイや金の産出を背景にアパルトヘイト制で徹底した人種差別による反発者を弾圧した南アの歴史の裏面を、一介の監視の目を通じて描く作品は淡々として静かな中に熱くたぎる民主と自由の尊さを描いて観る者の心を強く掴む、稀少推奨作品だ。

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