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2008年9月11日 (木)

新藤兼人「日本教育への遺言状」

 96歳、日本いや世界で最長老の現役映画監督・新藤兼人の最新作を観た。
昨年公開の「陸に上がって軍艦」と同様に自身の体験がストーリーの軸になった作品で「石内尋常高等小学校・花は散れども」は“先生と生徒の絆“と言う時代を超えた教育がテーマで、殺伐とした日本の教育に『新藤兼人・渾身の遺言』でもあろう…。

 映画は監督自身の人生に影響を与えた小学校の教師がモデルの人間ドラマだ。恩師には『人間はみな出世して偉くなる訳ではない。正しく生きるのが一番だ』と教えられ、平凡だが素晴らしい人生を過ごした先生の生き方に強い影響を受けた…。

 先生と生徒の絆をテーマにした代表的な作品に坪井栄の「二十四の瞳」がある。太平洋前後の小豆島を舞台に、女先生と生徒の絆が描かれているが、この「花は散れども」は大正時代末期の広島から山一つ奥まった旧佐伯郡石内村(現・広島市佐伯区石内)の新藤監督の母校『石内尋常高等小学校』。
当時は小学校6年までが義務教育で、卒業すると大部分が社会に出て“丁稚奉公”などで働いた。旧制中学に進学する者は数%で、優秀でも経済的理由で進学できない者は2年間尋常高等小学校で勉学できた。中学受験を志していた新藤少年は父の倒産で進学をあきらめて石内尋常高等小学校で学んだ。

 映画では、恩師の定年退職を機に30年ぶりに再会した同級生たちが恩師の生き方を教え子たちの目でとらえ直す。すでに半分は死亡し、参加者一人一人が自分の30年を語る。夫を戦争に奪われ弟に嫁ぐが2度目の夫も戦死した人やピカドンで顔に大やけどを受け苦しんできた人達のそれぞれの30年の思いは重く苦しい。

 意外な展開は子供の頃から思いを寄せ続け、今は料亭の女将に納まっている人の告白だ。
 彼女は大阪で別居中の夫がいるが、主人公の彼は思い続けた彼女の期待にこたえた。その結果、5年後に再会して5歳の娘のいることを知る。「新藤先生、音羽さんはご存知ですか…」「週刊誌は大丈夫?」と下世話に口を衝いて出そうな気がする“サプライズ”だ。
 しかし、ここが新藤流の男女の機微に触れる人間ドラマの真骨頂。監督自身が題材だけに、決断力に欠ける若き新藤と肝が座って決断力ある女将の対比は見事な味付けで面白い娯楽映画に仕上がっている。

 「陸に上がった軍艦」の山本保博監督が助監督を務め孫の映画監督・風さんが“監督健康管理担当”を務め出演は先生役を柄本明、“監督役は背が高く二枚目“と注文の豊川悦治、女将が大竹しのぶ、六平直正、大杉連、吉村実子、原田大二郎、川上麻衣子と蒼々たるキャストだ。子役のほとんどを地元で選んだのは「彼らの顔立ちや表情が都会の子供と違うからで、純朴な雰囲気は彼らにしか出せない」からだ。
 
 百歳に手が届きそうな監督の引き出しにはアニメで原爆の炸裂時をあらゆる角度と関わった人間を描く「ピカドン」をはじめまだいくつものシナリオがあると言う。

「僕は 映画監督と言う病気に掛っているんです これは一生治らないかもしれません」「生きている限り 生き抜きたい これはいつの間にか 僕の言葉になったね」いずれも、最近の監督の心情を綴った言葉だ。
 
 監督にとってはモンスターピアレンツが横行し教師が汚職に走り凄惨な犯罪が多発する現在の教育環境は到底理解しがたい問題であろう。
 70年を超える映画人生の締めくくり近くで取り組まれた作品が教育だったことは荒廃した教育の原点がなんであるか“昔も今も共通した根っこ”を示唆した作品「花は散れども」は『新藤作品・渾身の遺言状』と言える。
 
9月27日(土)~シネツイン・新天地-新天地レジャービル5F-(082‐246-7787)で
(10時・12時20分・14時40分・17時)上映。

このほか、新藤監督に関するイベントが重なった。
 *後援会「広島は私の街―新藤兼人監督と広島」 8月23日(土)13時~14時半
      平和祈念資料館東館B1 無料   主催:広島市・市文化財団
      問合せ:082‐243-2583
 *特別展「広島は私の街 –新藤兼人と広島」  8月21日~10月31日
    広島市公文書館 中区大手町4丁目1-1大手町平和ビル7~8階 平日会館
    問合せ:082‐243-2583
 *企画展「新藤家ねとの仕事―-家族・故郷・仲間たち―」 8月21日~9月23日
      広島市立中央図書館2階展示ホール
      問合せ:082-222-5542
 *名作映画鑑賞会 「新藤兼人―家族・故郷・仲間たち-」 9月5日~11月下旬
      広島市映像文化ライブラリー 大人:500円 子供:250円
     問合わせ:082‐223-3525

 問合せ先:シネマクラブ・ひろしま(映画センター内)
      TEL:082-293-1274(担当:勝田)
 HP:http://cc-hiroshima.ciao.jp

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