ダンサーに蹴られたアナウンサー
京都大学出のインテリのアナウンサーが開局後まもなく入社した。ド近眼の眼鏡をかけた小柄なY氏、物静かだが大酒のみでバンカラ精神の持ち主だ。
ある真夏のお昼時、暑さに耐えかねたYアナは局舎近くの京橋に出て橋の欄干から京橋川に飛び込んだ。「真っ赤なふんどしが鮮やかだった」と目撃者は語っている。今なら、数台のパトカーがサイレンを鳴らして集まる騒ぎになっていただろう。
柏村武昭氏が入社して間もない頃のことである。彼が宿直の時、先輩のHアナは、将棋を指していた。ニュースを伝える時間が迫っており、柏村氏は「先輩、あと5分しかありませんよ」と伝えた。かのHアナ「まだ5分ある…」将棋は正念場に差し掛かっていたのだろう。気がついたらニュースの時間は過ぎてしまった。「ああ!過ぎてしまいましたよ」という柏村アナに、Hアナ「過ぎてしまったものはどうしようもない」と将棋を指し続けたという。
ニュースの数分間、RCCラジオは、無音のまま過ぎた。
当時、宿直アナウンサーは、朝10時に勤務が終了して自由時間となる。ある朝
勤務明けとなったKアナウンサーは、同僚アナとさる劇場に向かった。昼日中から怪しげな演技を披露する「広栄座」という劇場である。当時市内には、こうしたいかがわしい劇場が3箇所あった。デスクのTアナはもっぱら広島駅近くの「二葉劇場」のファンであった。
Kアナは最前列に陣取って、やがて始まるであろう魅力的な踊りに期待を抱いていた。が、前夜酒を飲み明かして一睡もしていなかったKアナは、開演まもなく深い眠りに誘い込まれていったのである。気がついたときKアナは、ダンサー嬢に足蹴にされ、「気に入らんかったら去んで寝ッ!」とどやされた。誇りを傷つけられた彼女の怒りはもっともだ。客としての面目をなくした彼は2度と広栄座に足を運ばなかったという。「全国アナウンサー多しといえども、ストリッパーに蹴られたアナウンサーはお前一人だろう」当分評判であった。
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