“平和教育”に国がお墨付き?
6月30日の夜のTVニュースは一斉に「小学校で原爆投下や沖縄戦の歴史を判り易く指導する方向づけが出来た」と放送した。
翌日の新聞もそれなりに報道しているが、今更…なんだ?と反発する人は多いと思う。
文科省が2011年度からの新しい学習指導要領の解説書に広島・長崎への原爆投下や沖縄戦や各地の空襲など戦災の事例を明記する方針を初めて決めた。国が初めて“平和教育”の指針を示して、各都道府県の担当者に説明した…と言う報道である。
小学校で原爆投下や沖縄戦について全く扱われていない訳ではない。が、極めて不十分との認識を長い間、強く持ち続けている人は多い。全国的に見ると「8・6」や「8時15分」が判らない児童が大部分で、広島県内でも増えているのが現状のようだ。
県内では広島県教職員組合と被爆教師集団などが「平和教育センター」を構築して副読本作りや視聴覚ライブラリーなど独自の教材による平和学習に取り組んできた。しかし、旧文部省の「是正指導」で県教委が副読本や平和教育の排除を進め、教組の組織力低下と並行して「平和教育」はここ十数年で急速に後退した。たまりかねた広島市教委は一昨年から小学校に「8・6登校」を復活し「平和学習」の再構築に動いた。
今回、文科省が「平和教育復活」?とも受け止められる方針転換したのは其れなりの訳があった。昨年高校の日本史の教科書検定で「沖縄戦の集団自決は日本軍の強制」の記述削除に沖縄県議会や県民が激しく反発して「軍の関与」を復活させた。渡海大臣が「沖縄戦に関する学習が一層充実するよう努めたい」と約束していた。
新しい解説書に「沖縄戦」や「広島・長崎への原爆投下」「東京大空襲や全国の戦災」が書かれ教師の指導指針に明記されたからと言って簡単に「平和教育」が蘇るわけではない。
かつて私たちの時代に教員免許を得るには「憲法」は必須科目だった。いつの間にか必須から消えて「平和教育」も疎んじられるようになった。
いまや、現場に戦争体験持つ教師はいない上、纏まった手引書などはない。戦争の恐ろしさ悲しみや怒りを子供たちにどう伝えるか、失われた経験は簡単には取り戻せない。
しかし、いつか来た道…と嘆くことがあってはならない。そのために2011年の新指導要領の実施に向けて広島市が蓄積し、いま修学旅行のために準備している教材や手引書や資料などを国や全国の学校現場へ積極的に提供し協力する仕組みを考える必要があろう。
国が初めて「平和学習・平和教育」にお墨付きを与えた…と前向きに受け止めれば、遅すぎたとは言え広島や長崎が率先して協力する意義は大きく、やるべきことも多い…。
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