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2008年5月24日 (土)

静かな闘志・深さん逝く

 深さんは白い棺の中でトレードマークのタータンチェックのハンチィングを被り花に埋まって穏やかな寝姿で横たわっていた。祭壇の遺影もハンチィング姿だ。享年87歳。
 深さんと最後に会ったのは昨年暮れの三菱徴用工の判決勝利報告会だった。
同じ時期にそれぞれの立場で韓国人被爆者問題に取り組み、時に一緒に闘った中島竜美さん(本年1月80歳で逝去:1月31日付け当ブログ:「在外被爆者支援に懸けた人))もこの会でお会いしたのが最後になった。
 
 ヒロシマを歌い続け被爆朝鮮人徴用工を支え続けた深川宗俊(前畠雅俊)さんに初めて会ったのは37年前の1971年(昭和46年)だった。勿論、被爆朝鮮人徴用工の話を聞くのが目的で、読売新聞社の水原肇記者と大正橋の袂近くの小さな印刷工房を訪ねた。
 
 徴用工の指導掛として戦時中、三菱観音工場で働き、被爆後の9月15日夜、広島駅で見送り、祖国へ向かった246人が、ただの一人も郷里に帰っていない事実を知った。
 近くの喫茶店で度々会う内に水原記者と三菱の観音工場を訪ねたり、当時観音派出所に勤務していた警官を訪ねたり、周辺取材をするうちに、深さんが戸畑港から出航した朝鮮人の集団に漁船を売った事実を掴み「三菱被爆徴用工の行方を突き止める旅」が始まった。

 昭和48年、東京勤務になってからは深川さんが上京するたびに三菱本社と交渉する場づくりや国会での質問や陳情の手配など、「鎮魂の海峡…消えた被爆朝鮮人徴用工246名…」の出版を現代史出版会の橋本編集長への橋渡しを手伝たり…。本編取材は浅井、山本,藤田など若い記者に引き継がれニュースやドキュメンタリーなどに反映された。
 「被爆二世」の出版に多くの若い記者たちと合宿して取り組んだ思い出は忘れられない。

 深川さんは戦後いち早く詩人の峠三吉らと「反戦詩歌人集団」を結成し、GHQの厳しい言論統制(プレスコード)の中で詩作を通じて闘った。GHQは原爆に関する被害状況や個別な悲惨な被爆実態、写真や記事、詩歌までチェックした。被爆者としての発言も平和集会なども厳しく規制される中1950年8月6日の朝、福屋前で非合法の集会を開き、3,000人の警官が動員された。告知のビラを福屋屋上から播いた話は今も語り草になっている。
 1980年RCC制作のドキュメンタリー「GHQ 原爆プレスコード」(松永英美)が詳しい。

 こつこつと小石を拾い集めるように壱岐と軍政下の韓国を行き来しながら資料の収集がされ鎮魂の海峡を繋いでいった。思い半ばで病気に倒れたが多くの人が支え続けた…。 
 17年前に旅先で倒れて右半身の自由と言葉を失った。人の話は聞き理解できるが言葉がないのはつらいが周囲の人の助けである程度の意思の疎通は図られた。
 息子さんの話では「亡くなるまで加害の側面を乗り越えようという努力をしていた」「関連の新聞記事のスクラップは最後まで続けていた」なによりも「甘いもの、カープ,お洒落」がお伴でした…。
 愛用のモンブランの万年筆とハンチングは深さんのトレードマークで、丁寧な独特な筆跡が残っている(写真参照)。
 お洒落で寡黙な深川さんが好きで、いつの頃からか畏敬の念を込めて身近なわたし達は“深さん”と呼んできた。
 
 亡くなる前日に肺炎で、あっという間の別れでした…。楽な最期が幸せだった…。
 貴方は口数少ない静かな闘志だった。多くのことを教えて頂いた、感謝。安らかに…。

「鎮魂の海峡」表紙と裏表紙の深川さんの揮毫
1

深川氏の自歌揮毫の福島町の原爆慰霊碑
2

福島町の原爆慰霊碑(西区役所向かい側緑地)
3

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