映画「選挙」が語るもの
16日、話題のドキュメンタリー映画「選挙」の上映会があった。
2005年秋に行われた川崎市の市会議員の補欠選挙に東京の住人が落下傘候補として自民党公認候補として出馬する。参議院選の補欠選挙と市長選のトリプル選挙だ。
映画は偶然、候補者の出馬を知った学生時代の同窓でアメリカ在住の映画監督想田和弘が自らカメラを撮って選挙戦に密着する。
舞台は川崎市宮前区。候補者・山内和彦は東京で切手・コイン商を営む東大出の42歳。
政治に全く無縁で、選挙区には地縁も血縁もない地で選挙を戦ってみようと考えた動機は時の総理・小泉首相のフアンだったからだと言う。
落下傘候補とはいえ選挙費用は自腹。市議の補欠選挙だからこそ地元選出の県議・市議ら現職が自民党の従来からの選挙集票システィムの流れに乗って選挙戦を展開する。
ずぶの素人候補者に選挙のベテラン運動員は遠慮会釈なく「電柱にもお辞儀せよ!」とばかりハッパをかける。 候補は有権者に「市政への注文」を真剣に聞き歩く反面、選挙カーから降りて小学生にも「お父さんお母さんによろしく!」と働きかける。
自民党候補の義理人情としがらみに支えられた「どぶ板選挙」の舞台裏から徹底的に覗き込んだ映像記録としては日本の選挙史上例を見ない作品と言えよう。
トリプル選挙とあって参議院、市長候補と抱き合わせで地元選出の小泉首相も応援に駆け付けるあたりは偶然とはいえ、この映画を面白く味付けする要因になっている。
しかし、何といっても候補者山内の明るく元気なキャラクターが良く、体当たりの選挙戦を結果的に「当選」で”筋書きのないドラマ”として面白くしている。
レーションも字幕もなく、候補者の発言と周囲の人たちのやり取りが全てを語る構成もあまり例がない。字幕とナレーションに引っ張られる既存のテレビドキュメンタリーに飽きた監督のこだわりと受け止めた。
2月のベルリン国際映画祭で絶賛され、各国映画祭や評論家の評価は高い。政治や選挙に関心が薄い若者たちに、政治参加への契機となる映画としてぜひ見てほしいと思う。
会場に姿を見せ上映後の質疑で山内の対応がなければ分からない点が浮かび上がった。自腹選挙費はどれだけかかったか。なぜ4月の統一地方選で再出馬しなかったか。
次に選挙に出るとすればどんな選挙戦を戦うか。残念ながら判りにくさが残る。
日本の選挙は義理人情の民主主義と言う山内は、万一次に選挙に出る時はしがらみの無い「全く逆の形の選挙」をしたいと言う。彼が選挙を通じて学んだ「民主主義の実現は一人一人の有権者の意識」と言うメッセージがどれだけ通じようか・・・。
政治を学ぶ教科書とは言えないが“立派な手引き・参考書”になる。
今後もこの映画を普及しようと言う若者グループ「SENTAKU」の一人に、この春の県議選に「現職議員の横暴ぶりに歯止めをかける」と挑戦して善戦したH君の参加を見た。
映画の上映を通して、4年先の統一地方選で県内のあちこちに若者の有権者意識の改革を生み、政治参加と足元民主主義の実現に活かされるよう期待しエールを送りたい。
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