創刊に寄せて
憲法を考える映画「日本の青い空」試写会を観て、多少の用事を済ませての帰り、相生橋の半ほどにたたずみ、川面を見下ろした。川の水はきれいだった。カープのユニフォームを着た市民たちが、たった今終わったデーゲームの感想を声高に語らいながら、私の背を通り過ぎていく。
ふと、あることを思い出した。すこし前の広島市長選挙で、秋葉候補の演説に触れる機会を得た。秋葉氏は「阪神が優勝したとき、汚れた道頓堀に飛び込む人が多く大阪市長は心配しているが、私は、広島の川をきれいにする。カープが優勝したら、一緒に飛び込みましょう。」と話していた。
「オイオイ、ムチャをいうなあ。あなたも年を考えろよ」と私。
私が、大学をでて東京から広島へ移り住んだのが、昭和の38年であった。
川はきれいであった。宇品に下宿していた私は、休日には宇品湾に近い川べりに出て、大きなボラを釣り上げては下宿に持ち帰り、おばさんの手作りのアライを楽しんだ。引き潮の浅瀬では、貝掘りの家族連れがおり、学校を終わった子どもたちが、水浴びに興じていた。あれから40年余、いやたった40年後の今、その姿はない。
秋葉市長が言うように、その40年を取り戻すことができるのだろうか。
そのために、いかほどの叡智と努力が必要なのか、呆然と川面を見ていた。
「チリン」と自転車のベルが短く鳴り、「オジサン邪魔よ」と言わんばかりの接近で、われに返った。
すでに、人生の三分の二を過ごした広島、もう少し広島へ執着しようかと 考えながら、橋を離れた。
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